パーソナルスペースについて

 
最近、満員電車に乗る事が増えました。
東京、人大杉
満員電車や人混みで感じるあの、物理的な閉塞以外の不快感を久しぶりに感じております。
 
 
心理学用語でこれを『パーソナルスペース』(私有空間・固有空間)の侵食、と呼んでおります。
パーソナルスペースを我々が日々意識する事はあまりありませんが、個々の自我の確立には欠かせないものでもあります。
 
他人が必要以上に自分に接近する時、必ず
「これ以上近寄られると不快」
という瞬間がある筈です。これがあなたの、相手に対するパーソナルスペース領域を示しているのです。
いわば、自分のなわばり空間と言っても良いでしょう。
なわばりに侵入してきたので、不快である、と。
 
外食で食事中に後から来た客に「相席良いですか?」と言われると、にっこり笑って「どうぞ」と言いつつもあまり良くは思わないでしょう。
これが領域を侵された例です。後から来た客も無意識の内に、領域侵犯を認識しているからこそ一言断りをいれている訳です。
 
 
そしてパーソナルスペースは相手や状況、その人の年齢・思考や生い立ち等、様々な要因で領域を大きく変化させます。
特に領域の狭い事で全世界的に有名なのがアラブ人。
初対面でもぴったりと寄り添い、肩を抱きこちらを真っ直ぐに見つめ商談をしてくる彼等。
 
『でーい鬱陶しいんじゃ離れろいや離れて下さいはーなーれーろっつのお願いですからああぁ耳に息を吹きかけるのはやめて下さい感じてしまいます…』
 
郷に入っては郷に従え、欧米人よりも更にパーソナルスペースが広い日本人相手ではもう少し遠慮して欲しいものですが。
やはり逆に、アラブ諸国ではアラブ流の過剰な程のコミュニケーションを取った方が圧倒的に商談が纏まるケースが多いとか。
 
 
またパーソナルスペースを利用する例として挙げられるのが、キャッチセールス。
どうしてああも馴れ馴れしく近寄って話しかけられるのか、とお思いの諸兄も居る事でしょう。
彼等は、相手のパーソナルスペースに侵入する事で硬柔二通りの手段を得ることが出来るのです。
 
一つは「侵入されて不快だから早く追い返してしまえ」という思考を逆手に取って早く契約を成立させてしまう、硬の手段。
もう一つは「侵入した事により自分を認めさせ、自分に好意を持って貰い」平和的に契約を成立させてしまう、柔の手段。
 
前者はよく耳にしますね。しかし後者は一見矛盾を孕んでいる様に思えます。
これが大きな落とし穴。
 
実験例として、互いに面識の無い30名の中から女性Aと男性B・Cの3人で10分間歓談して貰いました。
女性Aと男性Bの距離は60cm、女性Aと男性Cの距離は2m。
これを各10回繰り返し、女性A役を務めた10名に質問した所
10名共に「男性Cよりも男性Bの方に好意を持った」という結果が出たのです。(1990 SGU S.Sawada)
 
60cmといえば普通ならば、知らない人が入り込んだら不快に感じる距離の筈ですよね。
これはパーソナルスペースに侵入される事で
「この人は自分に近しい人なのだ」
と思い込もうという、すり替えが無意識の内に行われた結果なのです。
 
更にパーソナルスペースは、女性の方が男性より狭いという事も知られています。
女性二人で寄り添ったり手を繋いで写っている写真は多く見られますが、男性同士で…寒いので以下略。
 
また、トイレの個室の使用箇所を調査したところ*1
男性は奥側の端が使用頻度が高く、女性は真ん中の使用頻度が高い事が確認されています。
隣に人が居ることで得られる安心感が、パーソナルスペースの領域を凌駕しているのでしょう。
 
こうした様々な心理的要因をなんと狡猾に利用している事か。
キャッチセールス侮るなかれ。
 
 
先日、電車内がほぼ満員であるにも関わらず、ある一人の男性の隣の席がぽっかりと空いていました。
どこからどうみてもヤーコです。ほんとうにありがとうご(ry
彼のパーソナルスペースは太平洋の如く広く*2、うっかり侵食してしまうと自分に危害が及ぶ事を皆誰しもが知っている為に、
その席には誰も座らないのです。
 
 
それにしても東京人のパーソナルスペース、狭すぎ。
皆よく我慢して乗車率300%の電車に乗れるよなあ。
田舎育ちの私には耐え難いや。とほほ。
 

*1:私が調べた訳ではない。いや寧ろ女性側なら調査してもい…うわなにをするやめrkどfヴぇ

*2:粗暴な人のパーソナルスペースは広い事も知られている。