祝・第135回直木賞受賞 『まほろ駅前 多田便利軒』
東京のはずれで神奈川に隣接する“まほろ市”(町田市がモデルか?)の駅前にある便利屋
「多田便利軒」に舞いこんだ依頼を中心にした物語。
便利屋を営む多田のもとに、多田の高校時代の同級生、行天(ぎょうてん・高校時代はぜんぜん親しくもなかった!)
が転がりこんでくるところから物語は動き出す。まほろ市土着の娼婦や不良、ヤクザや女子高生、警察が、主に行天の行動に引っ張られるように「多田便利軒」とかかわっていく。
(第135回芥川賞・直木賞はだれの手に?直木賞候補作紹介より)
っとまあ予告までした手前、買ったばかりの「キミキス」放置してまで読んでみました『まほろ駅前〜』。
予告で『風に舞いあがるビニールシート』の方をトップに張っておいたのは勿論フェイント。
ところで受賞したのは「出来レースの芥川賞・予想外の直木賞」だった訳ですが。
kwsk?
そも芥川賞を創設し、それを支えているのは天下に名高い文藝春秋社。
今回の受賞作は文藝春秋社発刊の「文學界」に掲載。
それ以外の候補作は全て新潮社発刊の「新潮」掲載作品だった訳で。
夫婦受賞*1で第130回以来の話題*2を狙った感も有りまくりな訳で。
その割には毎度イマイチ話題感に欠けている訳で。
いっそ中原昌也氏にあげていれば色々な意味で話題に事欠かなかった*3訳で…。
で直木賞。
先ずは森絵都さん。森さんは児童文学からの脱却中なのかな?その分野では実績を残している方です。
『風に舞いあがるビニールシート』は前評判も高く、最有力候補にも挙がっていたので順当と見るべきでしょう。
なんってったって過去5回連続直木賞を受賞していらっしゃる天下に名高い文藝春秋社様の発刊ですし。
でも文春ばかりでは芸が無い。
そろそろ他の出版社の作品も…で、候補エントリー5回目の正直、「陽気なギャングが地球をまわす」の映画化でノッてる伊坂幸太郎さんの『砂漠』(実業之日本社・刊)との2作受賞で決まり!
もう鉄板と踏んで伊坂氏の著作を前もって大量に注文しておいたのですが…
「おまえさん、もうギャンブルで版元に発注掛けるのはおよしなさいな」
脳内 呑み屋のおかみさんの声が空しく響きます。
そして直木賞2作受賞のもう一作、三浦しをんさん『まほろ駅前多田便利軒』。
感想としては、読み易くとても面白かったです。エンターテインメントとしては良質の作品だと思います。
ただ直木賞受賞となるとどうでしょう…。
なんか読後の印象が薄いんですよねえ。
「あー面白かった。おしまい」ってな感じ。
これと同じ感を受けた作品が遠〜い過去に有りました。赤川次郎さんの「セーラー服と機関銃」。
一般人が裏社会を垣間見たり、メンヘル性があったりへタレの男が活躍したりと共通点もちらほら。
主人公の多田というへタレ男には共感する箇所も多々有りました。
『一人でいたい。だれかがいるとさびしいから。
多田はそう思い、しかしそんなことを思う時点で、俺はもうとっくにさびしいのかもしれないなとも考えた』
アンタかよ三浦さん。俺の脳内を覗いたのは(笑)
ああ、へタレ男はちと失礼だったかな。
多田は
『知ろうとせず、求めようとせず、だれともまじわらぬことを安寧と見間違えたまま、臆病に息をするだけの日々を送るだけだった』
と己を振り返り変革する事が出来た。
私こそが、まだ暫くそれが出来そうに無いへタレだ。
最後にひとつ。設定に現代社会テイストでリアリティを出している以上、いくらなんでも立ちんぼが20分2000円は相場が安すぎジャマイカ?