夏の夜に生ける警鐘を聴く

 
東京都某区にて夜中の2時、至近距離でアブラゼミが元気に合唱しております。
そういえば、いつからなのか都会のセミは夜も鳴く様になってしまいました。
引越し回数10回を超える私ですが、思えば25年前も東京都民。しかもすぐ隣の区に住んでいましたが、夜にセミの声を聞く事など一度もありませんでした。
そして今、セミが夜中に鳴くのは東京都心部のみとの事。故に都心部で見られるアブラゼミ・ミンミンゼミが殆どで、稀にニイニイゼミの報告例もあるそう。
東京・神奈川・千葉で延べ15年暮らしたけれど、ついぞニイニイゼミの鳴き声を聞く事など無かったのは運が悪かったのか。
しかし、田舎の夜にクマゼミの大合唱なんて起こったら五月蝿い上に怖くてとても眠れそうにありませんね。
 
なんでも今の小学校の教科書*1では『夜に鳴くセミ』という説明文が載っているらしい。
ヒートアイランド現象と照明の影響から、夜でも昼間と同条件となる結果、東京では一晩中セミが鳴く様になった』
という事らしいのですが…
 
都市部の気温がその周辺に比べて高温を示す現象。これがヒートアイランド現象ですね。
因みに東京都の平年値を調べたところ
http://www.nakamuu.jp/kion/heinen.htm#tokyo
 
1991〜2005年
   最高 最低
7月 29.92 23.58
8月 30.94 24.61
 
1961〜1990年
   最高 最低
7月 28.76 22.25
8月 30.91 24.02
 
思った程の差が無い様です。が、都心部ではおそらく+2〜3℃なのではないかと考えられます。
そして大阪の気温を参考に。
 
1991〜2005年
   最高 最低
7月 31.77 24.76
8月 33.30 25.72
 
あら不思議。大体東京+2〜3℃ですね。
しかし大阪では夜にセミが鳴く事は無いらしい…報告例は悉く東京に偏っているとの事。
東京と大阪で照明にそんなに極端な差があるとは考えづらい。
では一体、何を以って東京のセミは夜更かしになったのでしょうか?
 
困った時のWikipedia先生。

東京は、世界でも代表的なヒートアイランドの例である。
ヒートアイランド現象の原因とされるものを挙げる。
どの要素がどの程度ヒートアイランドに寄与しているかは解っていない。
 
○樹木や裸地の減少による、降雨の地面への浸透減少、ひいては蒸発・蒸散量の減少。
○大気汚染による、大気が吸収する太陽エネルギーの増加(地球温暖化)。
○光反射率の低いアスファルトやコンクリートに覆われることによる、地表面が吸収する太陽エネルギーの増加。
アスファルトやコンクリートによる蓄熱(夜になってもアスファルトやコンクリートからの熱により、気温が下がりにくい)。
○産業活動や自動車、空調設備などによる人工廃熱。
○高層建築物による、風の流れの変化。

成る程。『夜になってもアスファルトやコンクリートからの熱により、気温が下がりにくい』
これは大きな要因になりそうですね。夜になっても下がらない気温で夜を昼と勘違いするセミが出てくる事が考えられます。
 
あとこれは単なる推測ですが『降雨の地面への浸透減少、ひいては蒸発・蒸散量の減少』も関係があるかも。
セミは、ある一定の気温と共に湿度が揃わないと羽化に失敗してしまうのです。
幼虫の頃は水分の地面への浸透減少も生育に支障をきたします。
で、生き残った数少ないセミにも何らかの影響を残してしまう…例えば個体数減少に伴う繁殖力の強化*2や行動時間帯に狂いが生じる等。
 
東京と大阪の違いは程度の差なのでしょうか。大阪でも既にヒートアイランド現象は起こっている様なのですが。
いずれにしても、人間の及ぼす様々な要因がセミの生態系を狂わせてしまっているのは間違い無さそうです。
 

…とりあえず、エアコンの使用を極力控えるとするか。
いや待て、そんな事をしたら私の生態系どころか頭が狂ってしまう。
では、設定温度を2〜3℃上げるとしよう。
 
セミシュプレヒコールがなんだか大きくなった様な気がします。
 

*1:大阪書籍 小学国語 4上

*2:セミは鳴く事で雌を引き付け繁殖する。鳴くのは雄のみ。