冬虫夏草について少し

mongkang2006-09-19

 
今回ちょっとグロいかも知れないです。
虫嫌いの人はスルー推奨します。
 
先日、セミの幼虫から一本の細長い茸が生えているのを発見しました。
ああ、冬虫夏草か。久しぶりに見たなあ。
ガキの頃は必死で探した頃もあったっけ…
 
今書いてて驚きました。「とうちゅうかそう」自宅のPCで変換すると「党中下層」どこの党の事やら。
じゃなくて変換出来ないのか…。
読んで字の如く、冬は虫だが夏になると草(茸は菌類で植物ではないが)になるというアレの事です。
アガリクスはご存知の方も多いでしょう。同様の薬効成分*1を含有する茸です。
ただ、日本で見られる冬虫夏草には薬効は無いのでいくら集めても売れません。残念ながら今のところは。
漢方薬として高値で取引されるのは、中国の標高4000メートルに生息する蛾の幼虫に付く「シネンシス」という種類だけです。トップ画像がその「シネンシス」。
因みに末端価格は100グラムで8〜10万円程度らしいですが、最近は乱獲で入手すら難しいとか。
 
冬虫夏草を初めて意識したのは、小6の頃だったでしょうか…
アシナガバチから生えた細長い菌糸を見て、小五月蝿いアシナガバチにも天敵がいるのか。コレもっと増えないかなあ〜
などと自然界のパワーバランスを崩す様な事を考えたのをおぼろげに覚えております。
 
また、同じ頃にモンシロチョウの幼虫(青虫)に取りつくアオムシコマユバチの幼虫を見掛けて不思議に思ったものでした。
このハチは宿主である青虫を生かしたまま食べて成長するのですが、中身を食べられて何故青虫は平気で動いているのか?
同じ寄生種でありながら冬虫夏草は宿主が動いてるのを見た事がないけれど…
勿論先生に聞いても判らない。生態図鑑を見ても寄生虫とか寄生茸なんてマイナーなモノの生態はどこ探しても載ってない。
何年か経って分厚い本を見て知ったのは、冬虫夏草は宿主を殺してから成長する事と、寄生昆虫はギリギリまで宿主が死なない様に限られた部位のみを食っている事。器用な奴等ですこと。
まあ最終的には皮一枚残して全て平らげてしまうのですが。
 
で、どうも寄生とは他の生物に依存して生活すること、であり
殺した死体から養分を取って育つのは「腐生」と呼ぶらしいです。*2
つまりハチは寄生・冬虫夏草は腐生と区別せよ、ということですね。
 
 
冬虫夏草が初めて文献に登場するのは、実は中国ではなく意外にもフランスです。
ジュージットという宣教師が中国を訪れた際に目を付け、1927年に学会で発表したのが世に冬虫夏草の出た第一歩でした。
その30年後になって中国は清朝の頃に「本草従新」という書物で冬虫夏草の名が初出しています。
中国4000年の歴史、という程古くはなかった様で。
ただ民間療法としては古くからあったらしく、セミの幼虫から発生する冬虫夏草を「金蝉花」と呼んで鎮痛剤として用いていた様です。*3
 
先に日本の冬虫夏草に薬効は無い、と書きましたが実は本場中国の冬虫夏草「シネンシス」と似た成分を含むサナギタケの研究が現在進められています。
既に抗腫瘍作用・抗菌作用が確認されているので、かなり有望なのではないかと思われます。
サナギタケは日本でも普通に見られる種類なので今後の研究如何では…
 
いえいえ決して金儲けなどではなく、癌の特効薬になり得ないかなーと。
 

*1:コルジセピック酸 っても化学には疎いので詳しくは知りませんが。

*2:青木襄児・著「虫を襲うかびの話」より

*3:難波恒雄・著「原色和漢薬図鑑」より