120円の些細な拘り 〜三菱Hi-UNI〜
自分で言うのもなんだが、私はモノに拘る性質だ。
但し拘り方に節操が無い。
PCは現在使っている自作機が5台目。
カメラはリコー→キヤノン→ニコン→オリンパスと買い換えている。
やれデザインが完璧じゃない、それ機能がもう一つ欲しい、と、乏しい資産の中で金の続く限り追い求めるのがスタイル。
そんな中、ひたすら憧憬してきたモノがひとつ。
それは『三菱Hi-UNI』。
言わずと知れた国産鉛筆の最高峰である。
シャープペンシルを使うと、芯が紙に付く量よりも 折れて砕ける量の方が遥かに多いという特殊な筆圧の持ち主なので、鉛筆は必需品だったのだ。
シャーペン世代の幕開けと言える程に普及し始めていた、シャープペンシルへの反発心がひねくれ者の私にあった事は言うまでもないが。
きっかけは小6の頃の担任の些細な一言だった。
「オマエがハイユニ使うのは10年早い」
一般に広く普及しているユニが1本30円の時代に1本120円*1という飛び抜けて高価な鉛筆。
正にハイエンドに値する書き心地を誇る日本の至宝。それが三菱ハイユニだった。
股に毛も生え揃っていないガキが使うには分不相応と言われてもしょうがない。
そう思い、その日を境に私はハイユニに別れを告げた。
いつか自分で稼げる様になったらまた会おう、と。
思えばこれがいけなかった。
中学ではデザインが気に入ったのでユニスターを使い、高校では輸入文房具に興味を持ちステッドラー社のルモグラフ*2を使った。
高校を卒業する頃には、ひたすら書き易い鉛筆を求め文具専門店を渡り歩く様になっていた。
1905年に発売したというファーバーカステル*39000番の歴史と書き易さに驚愕したり、ルモグラフは9HからEE*4まで意味も無く揃えてみたり。
鉛筆削りも試行錯誤の末に結局ELM社のBW-22というシンプルなデザインの物に落ち着いたり…
散財は止め処なく続いた。
時の経つのは早いものでそうこうしている内に私もいつしか働く様になり、以来ハイユニは常用している。
それでもふと、私はハイユニを使うに値する人間になれただろうか、と自問してみたりするのである。