『超投神グライシンガー』 第11話 「勝利と疑惑」

mongkang2007-06-30

 
炎天下のトダ基地。度重なる大炎上で上層部の怒りを買ったイシカー隊員はひとりごちていた。
 
「あーあ。主力の連中は今頃アキタ基地で戦争か…
 ボクも去年までは4年連続で戦艦10隻落としてたのに、今は後方部隊でやさぐれる毎日さ。
 しかもアキタはボクの故郷だってえのに。
 
 ああ、懐かしいなあ…まあアキタじゃもっぱらあの基地の事を『ヤバセ基地』*1って呼ぶんだけど。
 ほんでもって訛ってるから『ヤバス基地』って聞こえるんだ。
 っていうか、主砲の直撃喰らってまた左遷されたボクちゃんテラヤバスwww」
 
 
 
…グライシンガーは北の地アキタにおいてもその性能を遺憾なく発揮していた。
オレリューの切り札「憲神11式」もアオキ隊員の機動力を生かした攻撃を足掛かりに連打を浴びせ撃破済みであった。
 
一つだけ懸念があるとすれば、それは主力部隊配属経験の少ないパイロット・フクカー隊員の慢心だったであろうか。
彼はグライシンガーの高スペックに湧き上がる歓喜を抑えきれずにいた。
 
「すご…い…! 5倍以上のエネルギーゲインがある…」
 
敵主力機・フクドメーを一刀両断にし、彼の高揚は絶頂に達しようとしていた。
 
「撃つぞ・・・撃つぞ・・・撃つぞぉォォォォ!」
 
フクカーはこの日既に憲神・デニーの2機を被弾させ撃沈していた。
その勢いにオレリュー軍総帥・オチアイも平時の冷静さを失いつつあった。
 
「どうだ! …バカな…バックスクリーン直撃のはずだ!
 ああ…あれがジングー軍のグライシンガーの威力なのか!」
 
フクカーとグライシンガーは2発のダメージを受けたものの、勝利をほぼ確定させて帰投した。
 
 
このまま戦況が変わらなければ勝ちは確実。とその時、フルタ司令がフクカーを呼び止めた。
 
「おまえはグライシンガーの性能を当てにしすぎる。戦いはもっと有効に行うべきだ」
 
「い、言ったなぁ!
 ぼくが…一番、グライシンガーを…うまく使え‥るんだ… 一番‥一番うまく使えるんだ!」
 
彼にも思うところがあったのだろう。フクカーは怒りつつも狼狽を隠せなかった。
 
「こう言わざるを得ないのが現在の我々の状態なのだ、やれなければ今からでもトダ基地に帰るんだな。
 …グライシンガーの整備をしておけ、オノを使ってもいい。」
 
 
一方オチアイは戦況を振り返りつつひたすら首を捻っていた。
 
「うむ…憲神がやられデニーも死んだ…どういうことなのだ?
 グライシンガーにしろ、あの機動攻撃ユニットにしろ、明らかにジングー軍の新兵器の高性能の前に敗北を喫した、それは分かる。
 しかし…一体どういうことなのだ? 連中は戦法も未熟なら、戦い方もまるで素人だ…」
 
 
いま一人、ジングー軍の中にあってその戦局を苦々しく見つめている者がいた。
 
「ちぇっ、気取りやがってよう…戦ってるのは何もグライシンガーばかりじゃねえんだよぉ」
 
これまで再三にわたってジングー軍を壊滅の危機に追い込んだキダ隊員である。
 
 
やがて戦いも終盤にさしかかり掃討戦に移るかと思われた。が、突如ジングー軍の弱点が露呈する。
キダ隊員が機体の修復を誤りまたもや傷口を広げ、敵主砲の前に無防備で晒されてしまうという大失態*2を犯してしまったのだ!
しかもオレリュー軍の誇るタイロン砲*3が照準を合わせている…
直撃を浴びれば戦況は五分五分に戻りかねない。
 
「うわあ爆発しちまう!」
 
うろたえるばかりのキダに対し、ヤエガシ大尉は微動だにしない。
 
「この風!この肌触りこそ戦争よ!
 …司令。これを」
 
フルタはヤエガシから受け取った紙片を見て頷いた。
 
 
オレリュー軍は、敵の動揺が一瞬でおさまるのを肌で感じとっていた。
と同時に主砲の一撃が空振りに終わったのを悟った。
 
「エ、エンドーだ…! あの白い奴だッ」
 
元オレリュー軍、今期からジングー軍に寝返ったベテランのエンドーが、その経験と情報力をフル活用してタイロン砲の一撃を見事に回避してみせたのだ。
その防御力は数字にして実に1.98947を誇っている。
 
後に彼を評して元オレリュー軍総帥・センイチは語る。
 
「エンドーはワシが育てた」
 
最後にタカツ野戦病院*4が攻撃を受けたものの、こうしてジングー軍は勝利を収める事が出来たのである。
 
 
 
…どこからともなく含み笑いと共に聞こえてくる、地鳴りの様に低い声。
 
「戦いとはいつも2手3手先を考えて行うものだ」
 
 
この声の主は?
そしてキダはやはりスパイなのか!?
ジングー軍に大いなる闇が迫ろうとしていた…
 
 
 
次回・『超投神グライシンガー』 第12話 「カワシマ還らず」で、
 
レッツ・グライシーング!
 
 
 
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件・機動戦士ガンダム東京ヤクルトスワローズ球団などにはいっさい関係ありません。
 
  
中日 0 0 0 0 0 2 0 0 1 3
ヤクルト 3 1 0 1 0 2 0 0 X 7
 
勝利投手 [ヤクルト] グライシンガー(9勝2敗0S)
敗戦投手 [中日] 川上(6勝4敗0S)
本塁打 [ヤクルト] 福川 2号 、福川 3号
 
 

*1:秋田市営八橋『やばせ』球場。今じゃ こまちスタジアムなんてハイカラな名が付いているらしいが

*2:2死から2連打1四球で満塁にして降板

*3:元西武・南海のジム・タイロンに非ず

*4:タカツクリニック