短期非集中連載『毒』2−塩

 
いやあ、今日始めて入った定食屋の味噌汁がしょっぱいのなんのって。
元々東北人で北海道で延べ10年暮らし、濃い味付けに慣れている私でさえ閉口する始末。
塩分過多で殺されるのはイヤなのでもう行きません。
 
おっと、塩分過多による高血圧は毒とは関係無いか。
 
塩分は、体温を上げるために必要な成分です。
そして体温が36℃5分以下になると体内の酵素がうまく働かなくなり、様々な病気を引き起こすらしい。
北国における塩分多めの味付けは利に叶っているという訳ですな。
 
 
一般に毒性を表す指標としては「LD50」という値が用いられています。
LD50とは「半数致死量」の略であり、この量を投与すると半数が死ぬ、という値です。
 
LD50が10mg/kgの毒物は、体重1kgあたり10mgの投与で半数の動物が死ぬ事を表します。
つまり体重50kgの人間なら500mg与えれば死亡率50%という事です。
 
致死毒物として有名な青酸カリはLD50(mg/kg)が7.0。
50kgの人なら350mg。結構沢山摂取しないと死なないね。
 
オウムで脚光を浴びたサリンは2.0。
ニコチンは0.35で実は毒性はかなり強い。幼児ならタバコ2本食ったら絶命します。要注意。
O157のベロ毒素は0.001。おお、これは強力だ。案外どころか間違ってもバカにできんなこりゃ。
そして最強の毒・ボツリヌスは0.0005。体重50kgの人ならえーっと…0.025mg摂取するだけで命が危ないのか。こんな量、食事に入れられても絶対わからん。
 
アルコールは80.0。体重60kgの大人ならビール大瓶7本、若しくはウィスキーボトル1本飲めばクリア。
呑ん兵衛には「飲みすぎ注意」と言うよりも「LD50はボトル1本」と忠告する方が効果有りそうだ。
 
まあね、人間、何をどれだけ飲み食いしても死ぬか死なないか。常に確率は50%
と言われればそれまでですが。
 
 
そして食塩のLD50は4(g/kg)。
つまり体重50kgの私なら200g一度に摂取すると死ぬかもしれんという事です。
200gって案外簡単に摂れそうな気がするんですが…
 
因みに塩自体に毒性は無いらしい。但し、一度にこれだけの量を摂った場合は
血中ナトリウム急増→細胞が脱水状態→脳細胞萎縮→クモ膜下出血と絶命コースを辿る事になるそうです。
 
 
過ぎたるは、なお及ばざるが如し。
濃すぎる味噌汁は水で薄めて飲むとしよう。*1
 
 
  
参考文献:「へんな毒・すごい毒」田中真知・技術評論社
 

*1:※塩分の量はいくら薄めても変わりません